私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない

3.あれから……。




 十年後――。





 高校三年生のときのクラスの同窓会に参加した耀子から聞いた話。

 それは……。

 松尾が……。
 結婚……した……。

 相手は香原さん、とのこと。


 松尾は香原さんとよりを戻すこともなく高校を卒業。

 それから何年か経ち。

 松尾と香原さんは偶然、再会したらしい。


 それから友達として会うようになって。
 数ヶ月後には恋人。
 ……そして結婚へ……。



 そのことを聞いた私は……。


 ……大丈夫。
 だと思っていた。

 松尾とは高校を卒業してから一度も会っていない。

 だから。
 消えていると思った。
 心の中から。
 松尾の存在が。

 ……でも。
 それは……。
 ……違っていた……みたい。

 今でも。
 松尾の存在が。
 心の中に。
 残っている。

 過去形じゃなく。
 現在進行形で……。



 私は高校を卒業してから十年間、恋人がいなかったわけではなかった。


 ……でも……。

 松尾以外の人と付き合うことによって気付かされることがあった。


 それは……。

 私は……。
 やっぱり……。
 松尾のことが……。


 そう思う度に。
 心が張り裂けそうになる。



 そして。
 今は誰とも付き合っていない。


 きっと。
 もう誰とも付き合うことはできない……。



 ……好き……だから……。


 高校卒業してから十年経った今でも……。

 変わることなく……。

 松尾のことが……好き……。





 ……ねえ、松尾……。

 あのときに……。

 素直になっていれば……。




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