お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


***


6月6日(日)。
今日は晴れの予報だから、絶好の観察日和。


朝4時に起きたわたしは、顔を洗って髪を整えて。
自由帳とシャーペンを持って、足音を立てないようにこっそり彼の部屋へと向かった。


本日の観察対象は、小鳥遊 碧。


今日は1日碧にくっついて、徹底的に観察しようと思う。
彼が起きる時間から、寝る時間まで。


丸1日見ていればわたしがまだ知らない碧の姿が見られるかも。

ドキドキしながらそっと碧の部屋の襖を開けて、ゆっくり部屋の中へ。


相変わらず、ものがあまりない彼の部屋。
部屋にある家具はベッド、タンス、小さなテーブルのみ。


その小さなテーブルの上には、歴史の教科書とわたしが貸した授業ノートが開かれたまま置いてあった。
ちゃんと勉強してたみたいだ。


部屋は電気はついていなくて、照らすのはカーテンの隙間から差し込む少しの光のみ。


ゆっくり襖を閉めて、わたしは窓のすぐそばに腰をおろした。


ここなら光があたるから描ける。


自由帳を開いて、カチカチとシャーペンの芯を出して。
碧をじっと見つめた。


まだ、ベッドの上で寝ている彼。
少しも動かないから大丈夫、まだ起きてない。


今のうちに描いちゃおう。

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