お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「……そういう顔されると、期待しちゃうよ。俺、諦め悪いから茉白ちゃんのこと簡単に諦めてやらないからね」



次の瞬間には顔が近づいてきて……。
左頬に触れた、柔らかいもの。

それは──健くんの唇で。


心臓が大きく飛び跳ねて、早鐘を打つ。


唇が触れたのは一瞬。
彼はすぐに離れて、うしろを向くと。









「──碧くん、俺、茉白ちゃんに告白したから」


健くんがそう言ったのは、わたしではなく。

──いつの間にか、うしろにいた碧。


碧を見れば、彼は鋭い目つきで健くんを睨みつけていて、かなり怒っている様子。


い、今の、碧に見られた!?
……健くんが危ないんじゃ!?



碧はなにも言わずこっちに足を進めてきて、健くんにつかみかかるんじゃないかとヒヤヒヤしていれば……。


碧につかまれたのは、わたしの腕。
強く引っ張られて、立ち上がる。


わたしに触れていた健くんの手が離れて、碧はただ無言で歩き出す。

< 341 / 431 >

この作品をシェア

pagetop