お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


彼は数秒口をつぐんで。
それから、口を開いた。


「いいですよ。でも、わざわざ見せるものでもないし、俺はできることならあまり見せたくないので……お嬢が俺を観察して知ってください。
ストーカーのようについてきて、時には触れて、俺の隅々まで観察していいですから」


そう言うと口角を上げる碧。


……えーと、それはつまり、今ここで碧の口からは教えてもらえないってことだよね?
自分で観察して、自分の目で若頭としての碧を知れ、と。

若頭の碧のことが知れるなら、なんだっていい。


「その言葉、忘れないでね」
「忘れませんよ」


「じゃあ今度こそ、本当におやすみ」
「おやすみなさい、お嬢」


碧の返事が返ってくれば、今度こそ自分の部屋へ。

本人からストーカーの許可ももらったから、これから家では碧をじっと見よう、とわたしは心に決めたのだった。



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