お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
……って、勝手にやばい人だと決めつけるのはよくないよね。
もしかしたら体調不良で休んでるだけかもしれないもん。
それじゃあ、わたしがだれからも話しかけてもらえないのは……ヤクザの娘ってバレたからとか?
家から遠いい学校を選んだから、そうそうバレないと思っていたけど。もうすでにバレている、という可能性もある。
いや、でもまわりから怖がられているようには見えないような……。
ヤクザの娘ってわかったら、怖がられるのが今までの通常の反応。
今は特に怖がられていないから、それはまだバレていないと思いたい。
「別にいいじゃないですか、無理して新しい友だちなんてつくらなくて。人間関係なんてめんどくさいことだらけですよ」
いろいろと考えていれば碧はそう返して、卵焼きを口へと運ぶ。
彼は友だちをつくることに全く興味がない。
それは小学校からで……わたしだけが毎度『友だちがほしい』と言っている。
碧のことだから、たぶん高校でも友だちはつくらないんだろう。
めんどくさいとか、そんな理由で。
「それでもわたしは友だちがほしいの!友だちと一緒に楽しいことを共有して、一度しかないこの高校生活を楽しみたいの!」
「じゃあ俺と楽しみましょう。お嬢には俺がいますよ。というか、お嬢には俺だけがいればいいんです」
「…………」
碧がいるのは嬉しい。
けど!やっぱり、友だち……特に同性の友だちがほしい。