双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
「私たち星奈ちゃんを泣かせたくて言ったんじゃないのに」

「すみませっ……」

 なかなか涙は止まってくれそうにない。するとつられるように佳代さんもまた涙を流した。

「私までもらい泣きしちゃったわ」

「ほら、ふたりとも使って」

 明叔父さんにティッシュ箱を差し出され、私と佳代さんはそれぞれ数枚とって、勢いよく鼻をかんだ。

 そのあと、三人で顔を見合わせて笑ってしまった。

 両親に縁を切ると言われ、どうやって星斗と星七を産んで育てたらいいのかと不安でいっぱいだった私を救ってくれたふたりには、どんなに返しても足りない恩がある。

 たとえ離れて暮らしたって恩返しできないわけではない。なにかあれば今度は私がふたりの力になろう。

 その週の土曜日、優星君に返事をすると彼はとても喜んでくれた。そして五日間の間に何軒か目ぼしい物件も見つけたようだ。

 星斗と星七にも優星君と一緒に暮らすことを告げ、保育園の退所手続きやカフェへの店員補充なども考え、引っ越しは一か月後となった。

 それからの日々はできる限り明叔父さん、佳代さんとの時間を過ごした。いつも暮らしている離れではなく母屋で寝泊まりをして、五人で外食もした。

 ささやかなものだけれど、ふたりにプレゼントもした。

 そうやって悔いのないようにたくさんの思い出を作り、私と星斗と星七は迎えに来てくれた優星君とともに東京へ向かった。
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