最悪な日から始まった
それは私が小学校3年生の頃。

今思い返しても人生で最悪の一日。

私の人生において最悪の汚点日。


「トイレの花子さん知ってる?」
「3番目のトイレでしょ」
「ノックして花子さん遊びましょって言うんだって」
「やだ、怖い!本当にでたら…」
「連れてかれちゃうよ!」

どうしよう。
あの話聞いてから学校のトイレに行けないや。
さっきの休み時間にみんなが並んでるうちに行っておけばよかった。

けど冷んやり薄暗いトイレに近づくのも怖い。
私の次に並ぶ人がいなかったら…
個室の中の音がみんなに聞こえなかったら…

そんな事ばかり考えてしまう。
家に帰るまで我慢しようと思った。
でも我慢できそうもない。

5時間目、音楽か…移動教室だ。

先生怖いから音楽室までの移動中にトイレに行きたいって言ったら怒るよね。
休み時間が終わったばっかりだもん。
それに一人で行くのは怖いし…

尿意過ぎ去れ!過ぎ去れ!

ーモジモジー

ー?ー

わ、大河原くんこっち見てる。
よく目が合う子。
なんか観察されてるみたいで苦手だな。
今も私がオシッコ我慢してるのバレたかな。

嫌だな…

この日の音楽の授業は尿意との闘いで全然記憶にない。

記憶に残っている事といえばー

「はい!じゃあ授業終わります!」

「起立!」

わ、今立ちたくない。
立ったら漏れそう、
限界…
我慢できるかな(汗)

「きょうつけ!」

ーあ、

「これで5時間目の授業を終わります!礼!」

ーダメだ、、、

全身の力が抜けるのが分かった

ーシャー

生温かい…
どうしよう…

「着席!」

「はい、じゃあ教室に戻って帰りの準備!!」


ーワイワイワイワイ…

みんなの声が遠く感じる。

どうしよう。

みんなが私を気にせず教室に戻って行くのがせめてもの救いだ。

でも服濡れた
どうしよう
床…
どうしよう
先生に…
でも三年生でお漏らしとか先生に怒られる。
怖い。

ーはっ

気がつくと大河原くんがこっちを見ていた。
私はきっとこの世の終わりの顔をしていた。

誰にも気づかれたくなかった…

「夏木マジ?」

クスッと笑いながら横に来た。

最悪だー

噂流される。
バカにされる。
今だってクスって笑ってる。

ージワっー

泣いちゃダメだ

「…てか、どーすんの」

大河原くんが威圧的に感じた。

怖い

「…先生に言って来る。その前に床…拭くから大河原くんは教室戻ってて」

今すぐ大河原くんどっかに行って欲しい。

恥ずかしさを誤魔化すように用具箱から雑巾を取り出し無我夢中で床を拭いた。

でもビビリの私はトイレに行きたい事すら言えなかったのに漏らした事なんて言えるはずもなかった。

夏だったから帰りの会をしているうちに湿った服は乾いてきた。
あとは帰るだけ。
早く帰りたい…

「汚くね?服変えてないだろ!」

ードキ

「せ、先生がそのままでいなさいって。」

「ふーん」

バカバカ最悪。

なんで大河原くんが隣の席なんだ。
もう話しかけないで。
早く家に帰らせて。

私はこの日を一生忘れない。
人生最大の汚点を大河原くんに見られてしまった日を。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop