官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ちょっと貴斗、泣かないの。貴斗がもう少しお兄ちゃんになったら連れて行ってあげるから」

「いやよ、たかともおさかないきたいの!」

 ぐずっていたかと思うと、ぎゃーっと泣きわめく。そろそろいつもなら保育園でお昼寝をしている時間だから、眠たくて機嫌が悪くなったのかもしれない。

「貴斗、おさかなたくさん見たし、もう帰ろうか。暑かったし、疲れたでしょ?」

「いやよ、たかともおさかないくの!」

 貴斗はクーラーボックスの前にしゃがみ込んだまま、首をイヤイヤと振っている。完璧にご機嫌を損ねてしまったらしい。どうしたものかと思っていると、貴裕さんが貴斗の隣に腰を下ろした。

「貴斗」

 優しい声で名前を呼ぶと、貴裕さんは貴斗を抱き上げた。貴斗は嫌だと全身を捻って訴えている。さらに大きくなる泣き声に、これはさすがに私じゃないと……と思ったのだけれど。

「そんなに泣くな。俺まで悲しくなる」

 トントンと心地よいリズムで、貴裕さんが貴斗の背中を叩く。しばらくの間、根気強く続けていると、貴斗もいくらか落ち着いてきたらしく、泣き疲れた体をくたっと貴裕さんに預けた。

「泣き止んだね。貴斗はおりこうさんだな」

「……たかと、おりこうよ」

 まだぐすっぐすっとしゃくりあげながら、貴斗が言う。貴裕さんは貴斗の体と少し距離を開けると、貴斗の目を見て話し始めた。

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