官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「貴斗、おまえのパパいいやつだな」

 ふたりの様子を、微笑ましく眺めていたら、雄ちゃんが突然爆弾を落とした。

「ちょっ、雄ちゃんっ……」

 まだ貴斗には貴裕さんがパパだって言ってないのに!

「ぱぱ?」

 貴斗はそう言うと首を傾げた。貴裕さんが動揺した顔で私を見た。でももう私は迷わなかった。貴裕さんにうんと頷いてみせる。

 貴裕さんは膝に抱いていた貴斗の目を見ると、ふうっと息を整えた。

「そうだよ、貴斗。俺が貴斗のパパなんだ。……貴斗は俺とママの子供なんだよ」

「たかとのパパなの?」

「ああ、なかなか言えなくてごめんな」

 貴裕さんが貴斗の頭を撫でる。たぶんまだ貴斗はちゃんとは理解できてない。それでも何か感じるものがあったんだろう。

「……パパ、ぎゅうして」

 貴斗は柔らかな笑顔で、貴裕さんに向かって両手を広げた。

「……貴斗!」

 貴裕さんは一瞬顔を歪めると、小さい貴斗の体をギュッと抱きしめた。

「今までごめんな。寂しい思いをさせて、本当にごめん」

 そう言って、声を詰まらせる。はしゃぐ貴斗とは対照的に、貴裕さんの肩は小さく震えていた。

 貴斗が、貴裕さんのことをパパと呼んだ。貴裕さんの元から姿を消した時は、私達にこんな日がやってくるなんて思わなかった。胸がジーンと熱くなる。

 ……気がついたら、貴斗と貴裕さんの姿が涙で霞んで見えなくなっていた。

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