官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「ごめんください。開いてるのかしら?」

 半分だけ開けておいたシャッターの外から、女性の声がする。

「はい、少々お待ちください」

 軍手を外してエプロンのポケットに突っ込み、シャッターの残り半分を開けて、店の外に出た。

 店の前に立っていたのは、若い女性だった。大きな瞳が印象的な、パッと目を引く美人で、茶色いウェーブがかった長い髪を風に揺らし、涼し気なライトブルーのワンピースを見に纏っている。

 女性のすぐ後ろには、外国製と思われる堅強そうな黒い車が停まっていて、運転手が神妙な顔つきで座っている。こういう人のことを、セレブと呼ぶのだろう。

「いらっしゃいませ」

 そんな人がなぜうちの店に? と思わないでもなかったけれど、私はいつも通り丁寧に挨拶をして、女性を店内に迎え入れた。

「お客様、せっかくお越しいただいたのに申し訳ございません。本日は定休日でお店を開けていなくて……」

「あら、そう。でも構わないわ。花を買いに来たわけじゃないもの」

 キョロキョロと店内を見回しながら、ケロッとした口ぶりで言う。お客様じゃないとしたら、何をしに来たんだろう。

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