13番目の恋人
「いや、いいですよね! 何か野崎さんもお風呂あがりは、普通の男子~って感じで、髪の毛もぺしゃんとして可愛らしいし。新婚さんって感じ!」
 
 ……言うんじゃなかった。新婚さんだなんて。野崎さんも微妙な顔で、ますます言うんじゃなかった。
 
「……可愛いの? 俺……普通なの? 今」

 何か地雷っぽい。
 
「いつもは、格好いいですけれど、何か可愛いもいいですよ」
 どうフォローしていいかわからない。けど、ふーんと彼はそれ以上何も言わなかった。
 
「……じゃあ、もう一つ、歯ブラシもお揃い」

 並んだ歯ブラシ。これ、野崎さん結構可愛くないですか?思ったけれど、可愛いは地雷らしいので、今度は何も言わずにいることにした。
 
 口をゆすぎ終わったらどうなるのだろうと考えてしまって、それどころではないっていうのもある。
 
「ねえ、今から一緒に寝るけど、嫌じゃない? さっきから、眉間に皺寄ってるけど」
「えっ、すみません」慌てて自分でみけんをこすった。
 
 それから、「嫌じゃありません」って小さく答えた。恥ずかしくて、顔は見られなかったけれど、たぶん、優しく笑ってくれているんだろうなと思う。
 
 リビングの明かりは、全部消えた。寝室の明かりはごくごく小さなものだけ。
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