13番目の恋人
俊くんは、コツコツと数歩歩くと、ドアに鍵をかけた。

「誰もノックせずに入ってきたりはしないがな、念のため」
「元々、結婚は家同士の付き合いだって、俺も理解していた。それならと、家柄を知ってる女性と出会う機会は多い。その中でちゃんと恋愛した。もちろん、彼女で良かったと思ってるよ。見合いする前に出会ってたってわけ、これ、秘密な。見合いに持ってったってだけ。根回ししてね。表向きは見合い結婚。あったまいいだろ?」
「……そんな事が出来るの?」
「出来ちゃった」
俊くんはふざけて両手を広げてみせた。

「小百合だって、出来るさ。小百合は、家の事はそんなに心配しなくていいだろう? 」

確かにそうだ。本店は姉が継いで、本社は兄が継いでいるのだから。

「相手がちゃんとした男なら、反対はされないと思うんだ」
「うん」
「結局、みんな小百合に幸せになってほしいんだよ、わかるだろ?」
「うん、分かってる。感謝してるんだよ、ただ……自然に恋をしてたいって思ったの」
「OLになりたかったって、例えばオフィスラブ……とか?」

図星でカッと頬が熱くなった。安易な私を俊くんはお見通しだった。

「そ、そうなの。だから会社の飲み会とかもう少し参加して、親睦を深めたいなぁって……」
秘書室以外の社員は、会社で挨拶を交わすくらいしか関係を築けていなかった。
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