13番目の恋人
「お料理教室に通います」
 今のうちにと思っていたことをまた宣言する。
これには頼人さんは「うん」と頷いてくれた。じっと顔を見ていたけれど“やめてくれ”とも書かれていない。
 
「無理はしなくていい、食事は毎日のことだからな」

 しばらく考える素振りをして
「買い出しは一緒にするから、買い溜めはやめてくれ」と、言われてしまった。すごい、頼人さんどうしてわかったのだろう。
 
「お魚のお料理、たくさん覚えてきますからね」
 
 そう言うと嬉しそうに笑ってくれた。それから「あまり忙しくしたら、二人の時間が少なくなるからほどほどに……」と、少し照れながら言ってくれた。
 
 以前は忙し過ぎる頼人さんに、時間が取れなくて、遅い時間にこの家で帰りを待っていた。
 
 今は……一緒に住んでいるのだし、それに室長としての仕事がなくなり、自社のみとなればそれほど忙しくもなさそうで
 土日どちらかは二人の時間が作れていた。
 (人気(ひとけ)のないところで)私が運転するドライブに付き合ってくれたり、並んでお料理したり、ほんの少しの食前酒ではないお酒を嗜んだり。
 お揃いのパジャマは洗い替えと夏物が増えた。
 
 “婚約者”として誰かに紹介されたりもした。
 
 頼人さんは出来るだけ、二人の時間を作ってくれていた。
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