13番目の恋人
目の前の、広くはないラウンドテーブルにところ狭しと料理を並べてくれた。

……何だか、めでたそうな料理だ。
 尾頭付きの魚。『縁起物』だと言った里芋。
 もしかして……と、思う。結婚してバタバタはしていたが、ちゃんと抱き合う時間も作っていた。
……子供が、出来たのでは。そう思った。それなのに、いつも通りの小百合にこちらから聞くことにした。

「何か縁起のいいことでも?」
「ないよ、全く」

黒目がちの大きな目をぱちぱちさせてあっさりそう言った。小百合は嘘をつかない。……単にこの料理だっただけか。ふっ、何で正月でもないのに縁起物?きっと、無理して仕入れたはず。
小百合のおかげで毎日が楽しい。

 だけど、ほんの少しがっかりしている自分もいて……新婚旅行が終わるまではと思っていたけれど……子供、欲しかったんだな、俺。

小百合に加えて、また心配しなきゃならない存在が出来るのか。
「妊娠が発覚したら、その日から家から出すなよ。気が気でないからな」
と、俊彦が真顔で言った。いやいや……本当《《酷いな》》こいつの過保護っぷりは。そう思ったけど、俺も気が気でなくなりそうだ。楽しみで仕方ない。
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