13番目の恋人
仕事が終わり、大宮が手配していた店へと向かう。
 俊彦と園田さんが心配しているだろう部分は、何も問題がないように思えた。というのも、香坂さんの隣には大宮がいてくれたし、香坂さんもちゃんと輪の中に入れる様に、大宮がその場をまわしていた。
 
心配することなんてないじゃないか、と俺は俺で隣の女性社員に話しかけられるままに相槌を打っていた。
 なぜ女性というものは、わいわいと口々に束になって話しかけてくるものなのか。圧倒されて、邪険にするわけにも行かず、早くもこの場に来たことを後悔し始めた頃だった。
 
 「ね、室長。笑ったら可愛いっすよね」
大宮が、不意に話しを振ってきた。こう言われた場合、相手が誰であれ「そうだね」としか返せないものだ。
 
だけど、確かに俺もこの前そう思った。不思議な焦燥感が沸く。同時にテーブルが静まり返った。女性達がみんな、口をつぐんだからだ。他の女性を褒めた事で、少し苛立ちを顔に浮かべている者もいる。難しいものだな、女性は。
 もう一度賑やかになったタイミングで「みんな、笑った顔が一番可愛い」などという大して気の利いた事も言えず、再び女性たちにわいわいと言われてしまうことになった。
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