13番目の恋人
好きになってしまったら関係ない。仕方がないのか。“好き”とは、“なってしまう”もので、そうなれば“仕方がない”ことなのだと、私は、今まで知らなかった。
 
「でも、私……」
大宮くんにそんな感情を持っているわけでもなくて、たまたまリストに載っていた事を思い出したので、私が恋愛歴を話してしまった彼はリストアウトするのかなと思っただけだ。
 リストなんて、私側の身勝手なもので、向こうにその気はないのだ。
 ん?と、優しい瞳で見つめられて、私は恥ずかしくなってしまった。また、顔に熱が集まるのがわかる。

「その、大宮くんとそうなりたいとか、そんなわけでは……ただ、話してしまった男性は私をそんな目で見てはくれないのかなと思っただけです」
「だから、好きになっちゃったら、関係なくなるよ、過去なんてね。……それに、その話しを聞いたのは大宮と、俺も……」
 
俺……も?
 野崎さんははっとしたように、そこで言葉を止めると
 
「あー、大宮と俺だけだから、大丈夫だ」
 と、言い直した。

野崎さんは、元々、“好きになってはいけない人”だ。わかってる。俊くんにそう言われた。リストには“こいつだけは絶対にダメ”そう書かれていた。
 
私は、野崎さんを見上げたまま、動けなかった。
 
“好きになっちゃったら、仕方がない”
 なぜか、頭の中でそんな言葉が響いた。
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