キミに贈る言葉
第1話
【宮川一花side】
「今日よりお世話になります、宮川です。よろしくお願い致します。」
普通の株式会社。
の総務課。
たまたま募集してて応募したら採用して貰えた。
私、宮川一花。
元々レストランで働いていたんだけど体調を崩すくらいこき使われて退職。
しばらく鬱病にかかっていたけどまた社会に舞い戻ってきた。
「笹川くんに指導してもらうからね。」
「笹川です。よろしくね。」
…多分同年代くらいだろう。
爽やか系で笑顔が素敵な男の人に指導してもらうことになった。
「宮川さんって歳いくつ?」
女性に年齢を聞くのは失礼ではないだろうか。
私は別に気にしないけど。
「20です。今年21になります。」
「そうなの?じゃあ俺の1つ年下だ。」
やはり同年代だったか。
見た感じあんまり年齢変わらなさそうだったから。
「総務って言うけどここって所謂雑用課なんだ。
人が足りなければ営業行ったり工場で仕事したりする。」
会社内を案内してもらいながら私はメモをとる。
「この下が工場だよ。」
ちらっと下を見ると何やら部品が。
「工場に行く時にまた言うね。
営業は想像通りの部署だよ。」
まあ営業は営業だろうね。
やったことないから知らないけど。
笹川先輩はメモをとる私に目線を合わせる。
多分この人175はあるだろう。
私が157くらいだからだいぶ屈んでもらってる。
「…なんでしょう。」
「キミ、驚くくらい表情変わらないね。」
「…そうですか。」
そんなの言われなくてもわかってる。
前の職場でも接客業なのに笑顔がなくて店長やオーナーに言われたことがあったから。
「宮川さん。
分からないことあったらなんでも聞いてね。」
…正直私は…
笹川さんみたいなみんなに愛されてるような人が苦手だ。
「はい。ありがとうございます。」
自分で言うのもなんだけど私の顔はブサイクではない。
綺麗でもないと思うけど。
良くも悪くもないって感じの顔。
特別印象に残るような顔でもない。
が、学生時代にこういう人と関わって酷い噂をたてられたことがある。
それが鬱病の原因でもあるのだけれど。
【宮川一花side END】

【笹川将也side】
今日から新しく入った新人の宮川さん。
会社内をぐるっと案内しているけどこの子驚くほど表情が変わらない。
何も映していないような死んだ魚のような目。
真一文字に結ばれた唇。
気だるげなオーラ。
仕事になれば一生懸命なんだろうけど案内されているだけだからなのかずっと無表情だ。
「あの、笹川さん。」
「ん?」
「あの部屋なんですか?」
彼女が指さしたのは総務課のエースが入る部屋。
俺も行ったことないから分からないけど…
「正直俺も知らないんだ。
みんなは開かずの間って呼んでるけどね」
「…へぇ…」
宮川さんの声は鈴の鳴るような静かな声。
けど小さくもない聞こえやすい声。
表情があればとても綺麗な子だ。
少し色素の薄い茶色の目。
重たげな前髪は右側に流されている。
そして茶色の髪は低い位置でお団子に結えられている。
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