キミに贈る言葉
集合場所といってもパッと思いつくところがなくて宮川さんの住んでるアパートまで迎えに行くことにした。
「…すみません、お待たせしてしまって。」
白のブラウスに茶色のワンピースを重ねている。
フレア系でほんわか。
彼女のイメージぴったり。
そしてクリーム色のゆったりしたカーディガンを羽織ってる。
全体的にふんわりした感じだ。
「…あの…」
「あ、ごめんね。会社でのスーツのイメージがあって…」
宮川さんはキョトンとした顔で自分の格好を見た。
「…変でしたか…?」
「いや!変じゃない!
めっちゃ可愛い!」
「え?」
少し固まった様子だが…
恥ずかしいのは俺だ。
こんな口を突いて可愛いなんて言えないと思ってたから。
「あ…えっと…お願いします…」
ちょこんと助手席に乗り込んだ彼女は鞄からいそいそと何かを取り出した。
「笹川さん、いつもカフェオレ飲んでらっしゃるんでこれ…」
手渡されたのは俺の大好きなカフェオレ…
気遣いが素晴らしいほどできるし周りをよく見てる。
「ありがとう。じゃあ出発しようか。
少し遠いけど味は保証する!」
彼女がシートベルトをしっかり締めたのを確認して車を走らせる。
いつもは束ねられてる色素の薄い髪。
今日はおろしてゆるく巻かれてる。
休日はこんな感じなんだ…
お洒落で可愛い。
無口だし無表情だから何を考えてるのかいまいちわからないけど今日来てくれたから嫌われてはないだろう…
俺は恐らく嫌われてない…うん。

「ここだよ。
レトロで宮川さん好きそうだからここ選んだんだ。」
「すてきなお店…」
店の外観も森に建ってるような古民家風。
中に入ると木の香りが迎えてくれる。
森の中をイメージして外も木で囲まれてる。
「学生時代にこういうとこ知っていたかったです。」
「いい場所でしょ」
「勉強が捗りそうですね。」
「おすすめメニューはこのセット。」
「ではそれにします。」
「飲み物は?」
「コーヒーで」
メニューより外が気になる様子。
この木で囲まれてる敷地を抜けたら海だ。
「後で外行こうか。」
「はい。」
彼女と会話をしてて思った。
俺今まで遊んできた女ってここまで好きになってもらう努力したっけ。
そんな努力しなくても好きになってくれることしかなかったから。
宮川さんと過ごしてきてるうちに女遊びを辞めた。
本気になってもらいたいから。
外を眺めてる彼女の横顔は本当に綺麗だ。
「お待たせいたしました。」
「ありがとうございます。」
店員さんに微笑んで小さくお辞儀をした彼女。
店員さんも笑顔になって戻っていった。
小さなことでも気品さえ感じられる彼女。
「いただきます。」
手を合わせて小さく呟いた彼女は運ばれてきたサンドイッチを食べる。
「…美味しい。」
「でしょ?」
コクリと頷いた彼女は少し微笑む。
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