レインコートもいいけど、傘は必要
5.トラウマなのよ


 翌日の朝、濃い灰色の雲が空を覆い尽くしていた。



 星野は学校に向かうため、地元の駅で電車に乗り込む。


 座席にすわり、数分ほど進んだ二つ目の駅に到着。

 たくさんの人が乗車してきて、車内が一気に混み合う。

 姫井も人混みに押されながら乗車、星野の側で手すりに掴まり電車に揺られながら立ってた。



 そんな中、見慣れない制服を着た女子生徒三人組が、割り込みながら姫井に近付いてくる。


 この時間帯に乗車してこない女子高生たちは、姫井に体を密着させながら何かを話かけていた。

 どうやら、姫井と同じ中学の同級生らしい。

 他の高校の生徒だけど、顔見知りのようで何かを話かけてる。



 ――星野は直感で気づいた。

 話し方と態度を見て、スクールカーストに間違いない。



 姫井はすごく嫌そうな顔をして体をモジモジさせてるけど、スクールカーストに周りを取り囲まれてるので逃げようがない。

 座席にすわる星野は、成り行きを見守ることしかできない状況。



「レコちゃん、高校生になっても雨の日はやっぱりレインコートを着てるの~」



 レコちゃんと呼ばれてるのを耳にして、星野は不快な思い。

 レインコートだからレコちゃん、中学生の時に呼ばれてた姫井のアダ名だろう。

 きっと本人は、不本意な気持ちで苦しんできたはず。



「レコちゃん、相変わらず左手をスカートのポケットに入れて隠してる。変わらないよね、小学生の時に雷に打たれてからずっと!」



 星野は座席にすわったまま、顔を俯かせるのが精一杯。

 でも、姫井を取り囲む女子生徒の話は耳にしてる……




 ――その時!





< 15 / 21 >

この作品をシェア

pagetop