新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
「え…!?」

 娘は初耳な作られた設定に耳を疑った。シェフは気づかずニヤニヤしながら続ける。

「聞いたぞ?歳が近い男は、寒気がするほど苦手だったんだってなあ?御主人様はお若いからな…!」

(…まさか、そんな話になっていたなんて…)

「まあ、10も離れていないようだからな。確か、あの方は20歳は過ぎていらっしゃったか??」

「え…」
(私は、シェフに一体いくつに見えているの…??ご主人様が20歳なら、5つも違わないのに…)

 シェフは何も知らずにのんきに笑っている。

(…それにしても、二度ともしっかりお顔を拝見していないからあまり分からなかったけど、ご主人様は本当にお若いんだ…あれ…?)

 彼女はふと思い出す。

「あの…シェフ…?他に若い男性はいらっしゃらないんですか…?」

 シェフは少しだけ手を止めて考え込んだ。

「…いや?あとは30ちょっとくらいの室員と…10になるエリク坊やくらいか」

「そう、ですか…」
(じゃあ…夜に来るあの人は誰…?)
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