新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
「…ではなぜ、嫌だと拒否しなかったんだ?」

 主人は苛つきながら娘を押さえ付けて言った。

「…ご主人様が、望むなら、と…。私、コウさんが大好きです、でも、ご主人様が私を追い出したいほど嫌いなら、全てをお話して出て行かなきゃいけないと思って、今日は…」

「っ…!!…やはり俺のせいか…。ではお前は、私の…主人の命令なら聞くのか…?」

「それは…」

「…私が、お前をよこせと言えば、お前は私に差し出すか…?」

「え…」

 主人はさらに娘を抱きしめて言った。

「私が出て行かないでくれと言えば、お前は帰らないでいてくれるか…?」

「ご主人様…」

「“コウ”ならば、コウによこすか?帰らずにいるか…??」

「…私は…“貴方”が好きです…!コウさんがご主人様の本当の姿なら、私はどちらも好きです…!!コウさんは私の心の支えでした…私がいてもいいと言ってくださるなら、私は帰りません、いさせて下さい…!!」

 彼はその言葉に嬉しそうに微笑んだ。

「…尋問は終わり…仕置は無しだ。お前が欲しい…リリィ…!!」

「はい…!」
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