君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「その呼び方、おかしいだろ」


 そう指摘されて、あっ、確かに、と気づく。

 出会いとそれまでの関係が医師と患者だったから、普通に苗字に先生付けで呼んでたけど、今は一歩進んだ関係になったのだ。


「えっと、それじゃあ……公宏さん、で?」


 心の中で下の名前は呼んだことはあったけど、いざ本人を前に口に出してみると思った以上に緊張する。

 公宏さんは微笑を浮かべ「やっと呼ばれた」と言う。

 もしかしたら、お付き合いをするようになってからメッセージアプリ上や電話などでも、ずっとそう思っていたのかもしれない。いつまでそう呼ぶんだ?って。

 しばらくは間違えてしまいそうだけど、慣れていかなくちゃ。

 そんなことを思っていたときだった。

 通りがかった交差する道の真ん中で「ママー!」と声を上げる三歳くらいの男の子の姿が目に入る。

 くるくると回り辺りを見渡しながら声を上げている様子から、迷子になってしまったのだろうと予測する。


「ママー! どこー? ママーっ!」

< 127 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop