君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「え、じゃあ、延期とかっていう話に?」


 言われてみれば聡子さんも正装に身を包んでいて、特別な日だということに繋がる。

 式場に向かう道すがら事故に遭ったと考えられた。

 でも、何かおかしいと違和感を覚える。

 だとすれば、相手の男は今どこに……?


「延期……それなら良かったけど」


 自嘲気味にふふっと笑う聡子さんの横顔をじっと見つめる。

 笑えない話を始めようとしているのは、そこに漂う空気で感じ取った。


「なくなったのよ、結婚式も、結婚自体も」

「え……?」

「ごめんねって、あの子……こんなときに謝ってるのよ」


 語尾が溢れてきた涙のせいで震える。

 聡子さんは慌てたように「ごめんね」とバッグから取り出したハンカチで涙をおさえた。


「無くなったって、どうして当日にそんなことに」

「あの子、家の前で待ってたのよ。でも、なかなか相手が来なかったみたいで、自分で式場に向かって……。向かいながら、連絡してもなかなか繋がらなかったって。それで、連絡がついたと思ったら、結婚の話はなかったことにしてくれって、相手に言われたって……」


 そんなことが現実に有り得るのか?

 挙式の当日に結婚破棄を申し出るなんて、そんな惨いこと。

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