君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「で、診察のほうはどうだったの?」

「うん……MRIでみた感じは異常ないって言ってたよ。ただ、今日一緒に食事して私の様子みて、一部失ってる記憶はあるだろうって」


 久世先生に言われたことをそのまま話すと、母は表情をふっと無にして「そう」と言う。


「でも、今何も問題なく生活できているなら、大丈夫だって。忘れてしまってもいい記憶もあるとかって言われて……」

「久世先生、そんなことを?」

「うん」

「そう……」


 やはり、私の知らない何かをふたりが話していることを察する。

 忘れてしまってもいい記憶──それって、一体……。


「お母さん、それって──」


 訊きかけたそのとき、私を見ていた母が突然額を押さえる。

 調理台に手をついてよろけた体を支えた姿に「大丈夫!?」と咄嗟に声をかけた。


「ああ、ごめん……大丈夫よ。ちょっとくらっときただけ」

< 85 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop