姫と魔王の城
娘が気づくと、魔王の城の前に三人ともおり、姫はいつの間にか出された大きな寝床に乗せられて眠っていた。

その後魔王は人間の王に交渉し、娘の言った通り、人間たちが魔物に一切の手を出さないことを条件に、娘を連れて人間の目の届かないところへ棲むと約束した。

「魔物が彷徨かないのならそれは良い!だが、わしの娘…姫は穢されたのだぞ…!!」

人間の王が怒り狂ったが、魔王は毅然と言い放った。

「私は貴公の姫を抱いていない。手を触れてもいない。」

「え……!?」

娘は驚いた。

「姫君…私は貴女を穢してはいない。そうであろう?」

「本当か、姫!?」

目を覚ました姫は身体を起こした。

「…ええ。わたくしがそんな簡単に、この身を魔物に触れさせるはずはありません!それに、この者に触れられていたら、わたくしは魔力の暴走くらい起きても不思議ではないはずですわ。」

姫は先程のことは無かったかのように、気丈に振る舞った。そして娘を見て、

「それに、時間稼ぎにすらならない、役立たずのこの娘を魔王への生贄にすれば、厄介払いも出来て、わたくしの気も晴れるというものよ。」

そう言って姫は高らかに笑った。しかし魔王は、

「そうだ…この娘は私のものだ。私のしたいようにする……!」

そう言ってそばにいる娘の枷をすべて取り払うと、抱きしめ、そっと口づけた。そして驚いている娘の手を取った。

「優しき娘よ、私と共に来るのだ。」

今度は姫が唖然とする中、娘は少し嬉しそうに笑い、魔王と手を取り合い、光に包まれて消えたのだった。


その日から魔王の城、魔王と配下の魔物、そして囚われの娘は姿を消した。

魔王の去った城跡には、後に美しい泉が出来た。その美しい水は、飲んだ人々の心も浄化したという。
そして身代わりになった娘を憐れみ、泉には娘の名が付けられ、戦いを避けた魔王と囚われの娘の話は語り継がれることになる……
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