姫と魔王の城
「魔王さま~!」

起きてきた小鬼は泣きながら魔王の玉座の前までやってきた。

「どうした。」

魔王は涼しい顔で小鬼を見下ろした。

「も、もうしわけありません魔王さまぁ!お、おいら、姫の牢のカギを…失くしてしまいましたぁ…ひ、姫は鎖に繋がってて…逃げたりはしないはずで…」

ぶるぶると震えながら泣いて謝る小鬼に魔王は、仕方がないというように言った。

「無いというのなら仕方がないだろう、責任を持って、お前が付きっきりで姫を見張るのだ。」

「え……魔王さま…代わりのカギは…」

「必要なのか?ならば仕方がない…気の強く手の付けられぬあの姫を見張る役目を代えねば…。誰にするか…?殺人鬼といわれた元兵士長を…」

小鬼は慌てて魔王の言葉を遮った。

「ま、待ってください魔王さまっ!おいら、付きっきりで姫を見張りますっ!あんなやつくらい、ひとりで見張れますっ!暴れた
りなんかしたら、ひねり伏せてみせますようっ!」

小鬼が元気にそう言い、

「そうか。では任せたぞ。」

魔王は納得したように頷くと、小鬼は嬉しそうに娘の元に戻っていった。

「…あれでは本当の罪人は任せておけぬな…」

魔王は苦笑した。

「あんなに姫を思い泣いていたのに、姫といられるとわかったらもう笑顔か…ミグーでは純粋で正直で、『ひと』が良すぎる。鍵くらい、魔力でなんとでもなるのだから…」


「姫~!」

「ミグー…!どうしたの!?」

「魔王さまが、おいらがカギを失くしちゃったから、これからは付きっきりで姫を見張れって!」

「え、鍵を…?」
(さっきミグーは私の隣に寝ていた…牢に先にいてもあとに来ても、魔王は私だけを入れて牢に鍵を掛けられたはずなのに…まさか……)

「姫…」

小鬼は人間の子供のように娘に抱きついた。

「もう痛くない…?…温かいんだな…!姫のそばにいられるんだな…!」

「ミグー…!」

小鬼の頭をそっと撫でると、小鬼は嬉しそうに笑った。

(ミグーはとても良い子…大好き…!魔物でも、優しいひとはいるんだわ…。…もしかして魔王も本当は…。私だって、魔力のために本当なら、姫様の代わりに拷問を受けてもおかしくないのに、苦しめることまではされてない…あんなに人間が嫌いだと言ってたのに…。)
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