君と一緒!
夜中、体に違和感があって目を覚ますと、なんと、箱に入れたままにしたはずの人形が、私の体にまとわりついていた。

「な、何!?嫌あ!!」

必死で振りほどこうともがくが、人形は私に絡みついたまま。
その時、

「女の子には優しくしてあげないとダメだったね。」

私の声じゃない。
同い年くらいの若い男の人の声。私は今一人…のはず。
じゃあ、この声は一体…

「誰!?泥棒!?強盗!?」

私は急いで周りを見渡した。

「違うよ、僕、温めてあげようと思って。」

返ってきたさっきと同じ声の主は、すぐそば、つまり、私にまとわりついてる人形から聞こえた。

「いや……!!あなた人間だったの!?」

流石に恐怖で涙目になり、さっきより強く振りほどこうとした。

「違うよ、僕は人形。君と仲良くなりたいんだ。」

その声は穏やかでのんびりだ。

「じゃあなんでいきなり抱きついてるの!?」

優しい声に飲まれないように少し強い口調で聞くと、また相手は穏やかに言った。

「さっきも言ったけど、温めてあげたかったんだよ。僕が意識を持ったら君が寝ていたから、寒いんじゃないかと思って。あとね、君が起きたら早く抱きしめてあげたくて。」

私を抱きしめたまま、全く悪意のない感じで、そう言った。

「だ…抱き…!?」

「そうだよ?人間はそうされるのが好きだって、ご主人様が言っていたよ?」

ぼんやりある部屋の明かりで見える相手は、確かにさっき箱に入っていた人形で、微かに笑っているようだ。
私は唖然とした。

「大丈夫、痛くしないよ?優しくしてあげないといけないって言われたから。それにね…」

「あなた…人形…じゃ…ないんでしょ…??しゃべってるし…動いてるし……」

私は混乱したまま彼の言葉を遮る。

「僕は人形だよ?食事しないし、何も飲まないし、痛みは感じないし…」

「わ、わかったから!」

私はその男の人から離れるように移動して部屋の明かりを付けた。

「…。」

人形と名乗った相手はまた、私を見つめてから穏やかに笑った。

「明るい方がいい?…あ、ご主人様って呼んだほうが良いかな…」

「ち、違う、そうじゃなくて…!」

ズレている彼の話を聞いて、私は困惑した。

「…あ、そっか…びっくりさせちゃったんだね…ごめん…。でも、本当に人形なんだよ。」

「…なんで私の家の前にいたの…?」

私は混乱する頭をなるべく落ち着けてからそう聞くと、彼は困ったように少し下を向いて言った。

「それは言えないよ…言わない約束なんだ。ただ、悪いことしようとして来たんじゃないよ?」

私は彼の言っていることが全く分からず、さらに頭を抱えた。

「約束??誰との約束??私に正体不明な人形(?)をうちに置いておかなきゃいけないなんて…」
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