悪魔が気に入るお飾り人形!
次の日の昼過ぎ、レイさんが私を抱きしめて魔力を補給したあと、改めてのお礼も兼ねてクォーツさんのところに二人でやってきた。

「レイ様、ホタルさん、嬉しそうですわね。」

クォーツさんは今日も、優しく笑って出迎えてくれる。

「こんにちは…クォーツさん…!」

「こんにちは。…ホタルさん、だいぶ表情が柔らかくなったわ。良かった、前のあなたはなんだか消えそうだったもの…。」

「レイさんと、もらったネックレスのおかげです…!」

「それは持ち主次第なところもあるのですよ。あなたがレイ様と未来を夢見ることができたのが大きいはずです。何はともあれ、あなたの試練の一つは去りましたわ。」

「…一つ…?」

クォーツさんは真剣な顔で言った。

「もう一つ、あるはずですよ。あなたにとって、しなければならない事が…。レイ様もですわ。」

「俺も…?」

「…さ、レイ様?次に持ってきて頂きたい魔石はこちらですわ。地上界にもあるものですので、魔界に戻らずこちらで探して頂ければ…」

クォーツさんは何事も無かったように、レイさんにアルバイトでの依頼をし始めた。

(あ…もしかしてクォーツさん…未来だけじゃなくて、私に何が起きたとか、何があったとか知ってて、言わないように気遣ってくれてる…?)

「……ということでよろしくお願いいたします!今日は補佐のアルバイトは無しでいいですわ。お二人とも、お気をつけてお帰りになってくださいね。」


帰り道、レイさんは小さく呟いた。

「…他にアルバイト、探さなきゃな…」

「え?」

「魔石はもう、取ってこられなくなる…。それじゃクォーツのところだけじゃ生活出来ないからな…。それに、朝早く起きられるようにしなきゃ、お前といられなくなるんだろ…?」

「…。」

そういえば私は…学校をたくさん休んでしまった…。
お父さんはちゃんと仕事に行けているのかな…。私が学校にも行っていないことを、知っているのかな…?

「…お前…家に戻りたいか…?」

「え…」

レイさんが私を心配そうに見つめる。

「……戻りたくないです…。私、学校には自分がいる『居場所』を探さなかったから、もう……。でも、家は…お父さんは心配…お母さんもいないのに、私まで……」

「お前を一人ぼっちにしたのに…?叩かれていたんだろ…?」

「それでも……」

きっとクォーツさんが言っていたのは、このこと。私の、なんとかしなきゃいけないこと…

「……もしお前が心変わりして…」

「え…」

「…そんときはそんときか…!寄り道するぞ!」

レイさんの表情が少し引き締まった。そして、私を抱きしめて飛んでいたレイさんは、行く方向を変えて夜の空を飛び始めた。

「れ、レイさん、どこに…!?」
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