魔族の王子の進む道
「この兵士様はね、王子様くらい強い魔力を持ってるんだって!迷ったあたしを見つけて助けてくれたりね、迷いの森も出入り出来るんだよ!」

「あの森を!?すごぉい!!」

「今日は兵士様がお客様だから、忙しいだろうからちょっとだけど宴をするよ〜!みんな、お手伝いしてきてね!」

子供らは元気に、はぁい!と返事をすると、皆が集まっている広場に揃って走って行った。

「……。」

「ゆっくり歩こ〜♪」

子供らを見送ると、娘はまた歌いながら呑気に歩き出した。

「お前……王子を恨んでいないのか…?」

「え?どうしてですか??」

心妙な面持ちで聞いてきた彼に、娘はまたキョトンとしてそちらを見た。

「…お前は『相手』の為に、低魔族の娘を贄に差し出せと言われて城に来たはずだ。痛い思いをし、出て行けと……」

「ん〜と…悲しかったです…役に立てなくて…。でも、王子様はあたしにとって憧れだから!!」

「憧れだと…?」

彼は娘を嘲笑った。しかし娘は彼を見て真面目な顔で言った。

「きっとお仕事いっぱい、大変なのに、この世界のみんなを強い魔力で守ってくれてるんですよ〜?それなのに行方不明の弟王子様の心配までして!あたしなんかもっと混乱しちゃう!あたしには出来ないから、すごいな、って!」

「…。」

世界を守ることは、両親から力を買われてやっていた義務。弟には出来なかったことの一つ。
世界を魔力で包み、見通す為の力。
それでも弟は目を輝かせて凄いと言ってくれた。
自分自身はやりたくてした事でもないのに……

娘は目を伏せて続けた。

「励ましたかったのに…私じゃダメだったんです……。王子様、きっと私じゃ嫌だったんです…弟の王子様じゃないと、そばにいてほしくなかったんじゃないかなって……だから森まで探しに行ったのに…。」

「馬鹿な……」

彼は呟くようにそう言った。

何も知らないくせに余計な事をした娘。
しかし、弟がもう帰っては来ないことを、自分は周りに何も言わなかった…

「そうですね、バカなんですあたし、きっと。…でも、弟の王子様が見つかれば、きっと喜んでくれます!今度こそ王子様を見つけますよ!!頑張りますっ!」
< 13 / 27 >

この作品をシェア

pagetop