中島くんは私を離さない




1週間後。



仕事が終わって、奏を食事に誘う。


里帆から頼まれたのは、奏を食事に誘うこと。


ただそれだけ。


何をするのかは全く教えてくれなかった。



「瑠璃から珍しいね」
「ここ来てみたかったから」


新しくできたインド料理屋。


「クリスマス、どこか行こうか」
「クリスマス…」


「イルミネーションとかどう?」
「いいね」


「じゃ、決定」
「分かった」


「それと、年明けたら両親に紹介したいんだけど」
「え?」


てことは……


「結婚前提であることを言おうかなって」
「早すぎない?」


「もう俺ら来年で27歳になるんだ、適齢期だろ」
「でも付き合ってまだ間もないし、焦ることないよ」


「焦らないと瑠璃がいなくなるから」
「そんなことない」


ごめん、そんなことある。


里帆のメールを待っている。


里帆がメールしてきたら、奏と解散しても構わないと。


早くこの時間から抜け出したい。


奏とイルミネーションどころか、両親に挨拶なんてありえない。


スマホのバイブが早く鳴ることを期待する。


でも待つほど時間の経過は遅く感じてしまう。


「瑠璃、ちょくちょくスマホ見てるけどなんかあるのか?」
「え?なにもないy……」


スマホの通知が鳴る。


『私の家にカモン!!』


里帆からメールが来た。


「奏、ごめん、里帆から呼ばれたから行くね」
「いきなり?なんで?」


「なんか急用らしいの、だから行くごめん」


急ぎ足で店から出た。


これで奏とは最後だと信じて。
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