アネモネ
「今度の休日デートしませんか?」

平野くんからLINEが来た。一緒にお昼を食べた時に、流れで交換することになってしまった。こうグイグイこられるとやっぱ困るというか、私は彼の勢いについていけない。やはり、もう一度はっきり断るべきだ。

「ごめん、二人で出かけるのはちょっと」

彼には申し訳ないが、わたしは行かない趣旨を彼にLINEで伝えた。私のことを好きな気持ちは嬉しい。でも、その気もないのにデートなんていったら期待させてしまうと思ったのだ。

明日は休みだが、もう寝ようとベッドに入ろうとすると、電話が鳴った。

画面を見ると、登録してない番号だった。

誰だろうと思いながらも、電話に出る。

「もしもし、あのどなたですか?」

「…………」

沈黙。なんなんだろう、嫌な感じ。自分からかけてきたくせに嫌がらせだろうか。

切ろうとしたとき、はぁはぁという息が聞こえてきて、気持ち悪さを感じた。

「はぁはぁはぁ、、こころちゃん」

知らない男の人の少し高い声が聞こえる。

気持ち悪い、知らない人だ。あなたは誰なのか、なんで私の番号を知ってるとか、頭では考えてるのに、声が出ない。やっと絞り出したように

「だ、誰ですか、、、」

と言った自分の声はか細くそして、震えていた。

「かわいいこころちゃん…僕のものにしたいな〜、はぁはぁ…いつも君のことを見てるんだよ。今日は会社が終わったあと、〇〇駅の近くのコンビニに寄ってから帰ったよね?僕ちゃんと見てたんだよ…しかも今日はスカート履いてたよね?ダメじゃん、他の男に白い綺麗な脚を見せたらはぁ」

「っっっ!?」

電話を切った。手が震えて、スマホを落としてしまった。その男は私の後をさっきまでつけてたんだ。手足の震えがおさまらないうえに、涙で視界が霞んでくる。

男がもし、私の家の近くに今もいるのだとしたらと思うと、一人でこの家にいることがとても恐ろしく感じる。

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