双子の兄の身代わりになった妹の人生【短編】
 そして、仲睦まじい姿を見せてパーティー会場を後にした。
「留学に、私も同行したと知ればまた大騒ぎになるでしょうね」
 エミリーがおかしそうに笑った。
「……そうだな」
 だけど、アリーシャが知ればどれほどのショックを受けるのか。
「レイシア様、アリーシャ様のことを考えてるなら、むしろすっぱり諦めることが出来ていいんじゃないかって思いますよ?いつまでも引きずるよりよほど建設的です」
 エミリーは人気のいない場所まで来ると、演技を放棄していつものエミリオに戻った。
「うん、そうだね……」
 私も、緊張を解き、砕けた口調に戻る。
「それより、レイシア様の方が心配です。本当にいいんですか?いくら公爵家のためとはいえ……」
 我が国とはあまり交流の無い国への留学。
 その目的は、子供を産むため。
 亡くなった兄の代わりに、公爵家の世継ぎをもうける。女の私は、誰かに産ませるわけにはいかない。
 だから、ひっそりと世継ぎとなる男の子をもうける。
 それが、留学という名目で異国へと赴く目的。
 男児を産んだら、帰国する。
 子供は影に任せ、少し成長したところで、留学中に産ませた子供として公爵家に連れてこられ認知するという筋書だ。
「平気よ。貴族の娘として生まれたからには、政略結婚は当たり前ですもの。つまりは、好きでもない男の子供を産む覚悟だって出来ているんですから。それが、私の場合ちょっと特殊だというだけ」
 そう。
 ただ、少しの間産んだ子供と会えないのは寂しいかもしれない。
 一生お母様と呼んでもらえないのは寂しいかもしれない。
 だけれど、父親として一緒に過ごすことはできるだろう。
 悲しい表情をしてしまったのだろうか。エミリオが心配そうな目を私に向ける。
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