魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)

狩猟の館・リードの部屋 26-30ページ

<狩猟の館・リードの部屋・22時>

リードはゆっくりと目を開けた。
「気が付いたか・・まだ、体を動かすな・・」
その声のする方に、リードは首を向けた。

「私がわかりますか?」
「・・・イーディス先生・・」
リードはかすれた声で答えた。

まるで(かすみ)がかかったように、頭がぼんやりしている。

イーディス先生はリードの身体に屈みこみ、腕や首筋に触れて何かを確かめようとしていた。

それが終わると、先生はリードの顔を覗き込むように言った。
「グリセラと何があったのか・・
覚えているか・・?」

グリセラ・・・・
名前を聞くだけで・・
甘く、切なく・・そして悲しみの感情があふれてくる。

「グリセラ・・は・・?」
リードはやっとの事で口を開いた。

イーディス先生はベッドサイドに
ある椅子に座り、腕組みをした。
「魔女の国・・グランビアに強制送還だ。かわいそうだが、仕方がない。
・・・君も巻き込まれた。
だから説明しよう。ただ、聞いていればいい」
リードはうなずいた。

「グリセラは魔女だ。それもグランビアの次期当主だ」
先生はあごに手をやった。

「グランビアの魔女は普通、
髪の色が金か銀なのだが・・・
グリセラは黒髪だった。
黒髪の魔女は、とてつもなく恐ろしい、破壊する力を持っている。
・・君も見たからわかるだろう」
リードはうなずいた。

あの竜巻はグリセラが起こした・・呼び寄せた・・・

「グリセラは、風を支配することができる。
彼女が本気を出せば、グスタフ皇国の半分は吹き飛ぶだろう。
それほどの力だ。
だから、成人になるまでに、
自分の力を自覚して、コントロールできる強い心を持たなくてはならない」

イーディス先生は首を横に振った。
「グリセラには大きな魔力が出せないように、リミッターをかけた。」

あの眼鏡は視界を歪ませることで、力の暴発を抑える効果がある。
「グリセラはどう・・なるのですか・・?」
リードはやっとのことで声を出した。

「力を制御できなければ、
グリセラは消去される。
私はそれを見極めなくてはならないのでね。
あれほどの力を持つ魔女が、
消えるのは残念だが・・・」
イーディス先生はため息をついた。

「消去って・・殺される・・事ですか?・・!」
リードは起き上がろうとしたが、
先生に肩を押さえ込まれた。

リードは理解できないというように、先生を見つめた。

「消える・・
最初からこの世界に存在しなかった・・という事だ。
君のグリセラへの想いも無くなる・・だから・・」

「そんな・・」
リードの目から涙があふれる。
喉の奥が痛む。





< 27 / 35 >

この作品をシェア

pagetop