浮気 × 浮気


久しぶりの出勤だったから、正直とてつもなく緊張していたけれど、社員皆優しくて初っ端からリラックス出来た。

しかしその中に雪の姿は見当たらず、課長に何故かを問いかける。


「ああ、山下くんならもうとっくにこの会社にはいないよ。自分のしたいことを見つけたからそっちで働きたいと言ってねぇ」


と苦笑していた。

私はあまりにも急な出来事に、つい言葉を失ってしまう。
雪とは長年の付き合いで、親友だと思っていたのに…こんなに呆気なく関係が終わってしまうものなのかとショックが隠さなかった。

確かに入院中、電話をしてもなんの反応もなかったな…。


なんて、ついあからさまに落ち込んでいると、課長は「あ」と再び口を開いた。


「君が教育係を勤めていた子もね、同じように辞めていったよ。残念だが、致し方ないことだね」


そう言うと課長は私の元を去って行った。


…………教育係?

私は覚えのないことに首を傾げる。
私、誰かの教育係なんかしてたんだっけ?


そう考え始めた次の瞬間、急に頭にピキっと痛みが走った。けれどその痛みは長く続くことはなく、すぐに治まっていった。

私はそれにふっと胸を撫で下ろすと、自分のデスクへと向かい、パソコンと久しぶりに向き合ったのだった。

.
.
.



< 150 / 236 >

この作品をシェア

pagetop