浮気 × 浮気

木嶋 暁side


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《木嶋 暁side》


「無理言ってしまって、本当にすみません」


そう言って頭を下げる明里さんに、俺は軽く首を横に振った。


俺と明里さんの2人きりの個室。シンとした空気は俺にとってやけに重く感じられる。

正直この状況は、俺にとっても、そして明里さんにとっても良くないということはわかっている。

明里さんと会うのは良くない、近しくなるのはよくない。それは俺が1番よくわかっていたはずだ。だから、俺は敢えて明里さんに冷たく接していた。


……けれど、明里さんに頼って貰えたことが嬉しくて、葛藤しつつもつい受け入れてしまった。


「私、今日仕事でミスしたんです」


そんな心中、ふと明里さんがポツリと言葉を放った。


「大事な仕事だったんですけど、私のせいで台無しになってしまって。それで…なんかもう辛すぎて」


そこまで喋った明里さんは、暗い表情のままふっと自嘲するかのように笑い、再び口を開いた。


「情けないですよね、もう5年も働いてるのに」


取り繕ったように笑う明里さんは見ていてとても痛々しかった。

そんな時、ふと、ミスを被せられた日の事を思い出す。

落ち込んでいた俺を、明里さんは抱きしめて励ましてくれた。

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