離してよ、牙城くん。
すっかり黙りこくったわたしに、景野さんは苛ついたように声を少し大きくした。
「牙城クンも、病院に来るから早く行こう」
「牙城くんも……? な、なんでですか……?」
ほら、百々。
よけいなこと、聞かなくていいのに。
みずから傷つきに行かなくていいのに。
だって。
わたしとそっくりな顔をしている七々ちゃんが。
「なんでって……、────牙城クンの元恋人だからだよ。ナナさんは」
牙城くんと愛し合っていたなんて……、信じたくなかったからだ。