わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

 もう一度確かめた。
 やっぱり画面に私の夫が映っている。
 あっれれー? おっかしいぞー?

 でも私は、遠くだろうがシルエットだけだろうが、何故か宮燈さんはわかる。不鮮明なゴシップ記事の白黒写真。黒い目隠し線はあるけれど、あの横顔は間違いなく私の夫、橘宮燈である。うむ。

 私はあまり働かない頭で、リモコンを持って音量を上げた。画面が切り替わり、写真も別のものになる。女性アナウンサーの声が何故か遠くに聞こえる。

「このあと、ミコさんは、この男性を伴ってミコさんのご実家へ帰られたそうです」
「へええ、結婚秒読みと言ったところでしょうか」

 へええ、その人、既婚者ですけど、大丈夫?

 画面は、さっきと違って正面のカラー写真だった。距離はあるけれど、二人並んで歩いている様子が写っている。見間違いだよね、他人の空似だよねと心のどこかで思っていたのだけど、その写真の人物が着けている瑠璃色のネクタイピンは、私がクリスマスに宮燈さんに贈ったものだった。
< 114 / 188 >

この作品をシェア

pagetop