わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

11. 橘部長と仲直りする

 私が投げ飛ばした携帯端末は画面が光っていたから、多分着信しているんだろう。でも、端末を拾い上げた森羅さんは、それを無視して私に向かって言った。

「貴女の言う通りです。こちらの都合で振り回してるのは僕たちだ。すみませんでした」

「うん、それはそう。もう関わらないでください。迷惑しか被ってないです。あなた達のせいで、こっちはしたくもない夫婦喧嘩になりました!」

 私が怒ってそう言うと、森羅さんは微笑みながら「僕はまた貴女に会いたいけど」と呟く。何その口説き文句。しまった、顔がいい。うっかり(ほだ)されそうになったが、気を取り直して宮燈さんに言った。

「帰りましょう」

 立ち上がった宮燈さんは私の髪に触れる。そういえば旧自由亭で会ってからずっと、宮燈さんは髪とか頬とか、少しだけ私に触れてくる。なんだか雰囲気がえっち。
 ドキドキしながら夫を見上げていると、森羅さんが笑いながら言った。

「さて、僕の出番は終わりかな。じゃあ佐世保に戻ります」
「佐世保?」

「イルミネーションのロケで、暗くなるまでの待機中に抜け出して来たんですよ。それと、この部屋は僕が連泊する予定だったんですが、宿泊者を兄に変更しておきます。佐世保にもホテルをとってあって、今夜はどっちか気が向いた方に泊まろうと思ってたので」

「嫌ですよ! 余計なお世話です! ねえ宮燈さん?」

 そう叫んで見上げると、宮燈さんは無表情で「桜は捕まえたから、もう東京へ帰りたい」と言った。捕まえたって言い方が動物みたいだから抗議しようと口を開いたけど、それより先に森羅さんが言った。

「この部屋が嫌ならコネクティングルームの方を使ってください」
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