わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

17. 言葉

 元々は住み込みの使用人さんのために建てられた一軒家だそうで、水回りは充実していた。使用人さんも減って、使われなくなっていたのを、橘部長にあてがったらしい。

 シャワーを浴びて、浴室を出たら浴衣が置いてあった。部屋に戻って橘部長に聞いてみたら、お母様が準備して持って来てくれたそう。何か恥ずかしい。

 橘部長がお風呂に行ってる間に、薄化粧をした。チープコスメしか使ってないし、あんまり上手じゃないから、また、なっちゃん様にご教授いただかなくては……。


 橘部長の足音がしたから、部屋の入口を振り返った。
 浴衣を着ている橘部長に鼻血が出るかと思った。
 反則のおろした前髪。そして浴衣が似合ってる。濃藍(こいあい)に黄土色の帯がめっちゃ似合う……。「すみません、写真撮っていいですか?」と思わず聞きそうになったが、ストーカー相手に藪蛇になりそうだったのでやめておいた。

 橘部長が無言で厚いカーテンを引く音が、やけに甲高く聞こえる。この離れには二人きりなんだなと考えると、緊張してきた。
 さっき、お母様は「宮燈さんたら、やらし」と言ってたから、もう周囲にはバレバレなわけで……。でもいわゆる新婚さんだから、別に変な事ではないし……。それに忙しい中、週末に時間を作っていたせいで少しタスクがたまっているらしく、来週からはしばらく会えないと言われているし………………うわあああ! これから五時間ずっとえっちとか、えっち!!!
 お、落ち着こう。
 ……私、鼻息荒くないかな?
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