わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

02. 橘部長から逃げ出す

 宮燈さんは時折、少し離れた場所にいる私を見る。でも、目が合うたびに私の方から反らしてしまう。私への視線に苛立ちを感じるから、もう私の事なんか嫌いになってるんじゃないかと思うと、怖くて視線を合わせられない。お願いだから私を見ないで欲しい。

 どうしてすぐに謝らなかったのか、自分でも馬鹿だなあと思う。
 前日まで寝込んでいたから、服や食器を散らかしていて、そんな自分の家を見られてしまったのが恥ずかしかった。宮燈さんは心配して来てくれていたのに。

 八時に京都にいたってことは、終業後すぐ新幹線に乗ったんだろう。そして、きっとあの後、東京に戻ったに違いない。お金も時間も無駄にさせてしまったと思うと、泣きたいくらいに申し訳ない。ごめんなさいとのメッセージを無視されているのも、辛かった。無視されるって悲しい。でもそれだけのことを自分がしたんだから仕方ない。

 結婚……というか、お付き合い自体が初めてだから、当然好きな人と喧嘩するのも初めてで、どうしていいか分からなかった。夏休みいっぱいでアルバイトも辞めて、今は研究室へ通うだけの生活なので、なっちゃんに気軽に会えないし、誰に相談していいのかすらも分からなかった。
 お母様に相談しようかなとも思ったが、そうすると「私が気ぃ利かへんさかい喧嘩してしもうた。私が宮燈さんに連絡しとけばよかった」と自分を責めそうだったので、私たちが喧嘩している事は黙っている。
< 78 / 188 >

この作品をシェア

pagetop