わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

04. 橘部長が声を出して笑う

 宮燈さんが本当にバスルームへ行ってしまったから、火照った体を持て余してる状態の私は悶々としていた。
 うう、鬼のようだ。もう怒らせないようにしよう。「次は絶対許さない」って言われたけど、許されなかったら何をされるんだろう。

 足の腱を切られて監禁されるやつ……?

 いや! それ普通に痛いし不便だから! やらないよね。やらないと思う、多分。
 もしやられそうになったら「私が立てなくなったら宮燈さんのお好きな立ちバックが出来なくなりますヨ!」って言おう! そしたら思いとどまるはず!
 財力あるし、やりかねないから怖い。

 バッドエンド妄想をしていたら頭と体が冷えてきたので、私はベッドからおりて、扉近くの姿見で自分の全身を見た。痣だらけだった。以前、電車の中で、襟ぐりの広い服から胸元の痣が見えている女性がいて、私は(痛そう。怪我したのかな、かわいそう)と思ったことがあるが、あれはキスマークをわざと見せていたのか。

 私も見える場所に痕がついている。どうしたらいいのこれ。私には見せびらかす趣味はない。

 ネットで検索したら、冷やすか、ファンデーションやコンシーラーで隠すように書いてある。
 布団に潜り込んでスマホを見ていたら、宮燈さんが部屋に戻ってくる気配がした。私はその時『見える位置にキスマークを付ける男は独占欲が強い』というネットの記事を読んでいた。そこに『背中は浮気防止』と書いてあった。
 布団を捲られて「何をしている?」と聞かれたので、その画面を見せる。
 橘部長が綺麗な顔でそれを凝視して「君が浮気……」と呟いた。

「また想像で落ち込んでませんか? 私より宮燈さんの方が心配です。私も宮燈さんの背中につけちゃおうかな」
「何故? 私は君以外に全く興味ないのに?」

 そう言われて少しうれしくてドキドキしつつ、同時に胸がもやもやした。私はそのもやもやした気持ちを、ストレートに宮燈さんにぶつけた。

「じゃあ、さっきのあれ、何ですか?」
「あれ、とは?」
「中庭で」
「ああ、アレか」
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