強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】

…それにしても向井、普通だったな。

ちょっとくらい意識してくれても、なんて思ってしまうのは私のわがままだ。

だって昨日の予期せぬ告白の後、向井とどうこうなりたいって訳じゃないから今まで通りでお願い、そう私が言ったんだから。



総務部に戻る途中、

「宇野部長、秘書課の安西さんの告白も断ったんだって。例のあのセリフで」

「えー、あの社内一美人な安西さんでもダメなのー?心に決めた人がいるって、やっぱり本当なのかな?」

「本当だとしたら仕事も出来てイケメンで、それでいて一途で誠実とか、もう完璧過ぎない?」

と小声で噂しながら歩いてくる女子社員2人と、お疲れ様です、と会釈してすれ違った。

すれ違い様、心の中で人のことを面白半分に揶揄う意地悪な一面もありますよ、とこっそり付け加えておいた。


そうなのだ、宇野部長はあんななのに、告白してくる女子たちを毎回「心に決めた奴がいるから」という理由で振っているらしい。

私なんかはどの口が言うんだ!と思ってしまうけれど。

だってあの部長が誰かを一途に思ってるとか、俄には信じ難い。




ーーこの時の私はこの噂を聞いて、ただ付き合う気はないって振るよりも、相手を傷つけることなくそれでいて好感度の上がるこのセリフを、鉄板の振り文句にでもしてるんだろうなくらいにしか思っていなかった。

だけど、後々それが間違っていたと、知ることになるーー。

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