強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】

「…えっ、ちょ、おい、泣くなよ…!」

普段は人のこと揶揄ってばっかりのくせに、こういう時に優しいとかやめて欲しい。

余計に泣けてくるから。

「…う〜…」

「ちょっと藤吾くん!うちの可愛い一華ちゃん泣かさないでよ!」

レジでカウンターにいた男性客のお会計を済ませて戻ってきたらしい慶子ママは、部長の頭を軽く叩く。

「いや泣かせたの俺じゃねーし!」

と抗議しつつも、あー、もう早く泣き止め、向井なんかに泣かされてんじゃねーよと、言葉とは裏腹に片手で頬杖つきながら、もう片方の手は私の頭をさっきよりも優しく撫で続ける。


ーー部長の手は、大きくてちょっとゴツゴツしていて、それでいて温かくて優しい。

それが何だか心地よくて安心する。




部長の前で泣くなんて不覚にも程があるけれど、この優しい手を知ってしまったから、当分涙は止められそうになかったーー。





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