イケメン年下男子との甘々同居生活♪
 あの日を境に、私は自分の部屋で眠ることがなくなる。
 朝目覚めると、彼の温もりがまだ残っているベッドの中で背伸びをするのが心地よい、動いた時にふわっと香ってくる匂いに幸せを感じるようになっていた。

「でも……」

 正直体がもたない、一緒に眠ることが増えると相手は若い男性、必然的に体を求められる回数は増えていき、仕事とのタイミングがあえば絡み合ってしまう。
 最近は、志賀くんの弱いところもなんとなく把握してきたので、一方的というのは無くなってきたが……って、私は朝からなにを考えているのよ。

 脱がされた下着をさがし、身に着けると簡単に着替えてリビングに行く。
 今日は朝早くに出て行くと言っていたので、既に姿は無かった。

「凄いわね、若さって」

 昨日の夜に重なって、そのまま仕事にいけるなんて、今の私は無理かもしれない。
 行けと言われたら行くが、正直しんどかった。

「しかも、料理までしているなんて」

 テーブルに置手紙があり、冷蔵庫には朝食が用意されていた。
 感謝しながら、食べると自分も出社する準備を始めた。

「頑張ろう」

 疲れは少し残っているけれど、元気を彼からもらえていたし、私も彼を求めている部分は確実にある。
 それに、愛されていると実感できるのも嬉しかった。
 ずっと、独りでいることが普通で実家にも帰らなくなってきたのはいつからだろう? 帰るたびに彼氏は? 結婚は? と、言われるのが嫌で実家なのだから家の中でゴロゴロしていたかったが、どうにも肩身が狭くなってしまい帰るのを躊躇している。

「別に飢えていたわけじゃないけどね」

 愛が枯渇していたとは思えないが、きっと思った以上に空っぽだったのだろう、スカスカな私という器に注がれるのがたまらく嬉しいと思う。
 炊き立てのご飯を食べて、薄い珈琲を飲んで仕度をしていく。
 チークの色を変えてみた、トーンを落として淡い桃色で少し幼くなってしまうし若作りしているって思われそうだが、なんとなくそのままで行こうと思った。

***

 会社に行くと、私のスマートフォンが震える。
 誰かと思い、ディスプレイに映し出された名前を見て驚いてしまう。

「もしもし?」

 急いで給湯室へ行き、小声で会話を始めた。

「おはよう」

「おはよう、じゃなくて何かあるの?」

 電話の相手は漆田くんで、なぜか上機嫌な口調で私に話しかけてくる。

「実は、頼みたいことがあってね」

「頼みたいこと? それって仕事関係?」

 少し考える素振りが聞こえてくるが、いや、それ絶対フリでしょ……なんだか怪しいぞ。
 そんなことを考えていると、ぽそっと提案された。

「今度一緒に食事しないかい? できれば、仕事を抜きで」

 わざわざそれを言うために、今! このタイミングなのだろうか? 意味がわからない。
 私は軽くため息を吐くと、これ以上朝の貴重な時間を潰すのはもったいないので、軽い気持ちで答えておくことにした。

「わかったわよ、スケージュールはそっちに合わせるから」

 素直にやったー! なんて声が聞こえてくる。
 そういった素直なところは変わっていないんだなって、そして、唐突に話を進めていくのもそのままだなんて、ちょっとは改めるべきだと思う。

「それじゃぁ、今日ね」

「はぁ⁉ 何言っているのよ、きょ、今日って」

「スケージュールは任せるって言ってたじゃない」

 うぅ、確かに今言ったばかりで、しかも今日は金曜日で帰って志賀くんと一緒にお気に入りリストに入っている映画を消費しようと思っていたが……。

「わ、わかったわよ。少しだけね、用事があるから時間になったら帰るから」

「わかっているよ、助かるありがとう」

 通話が終わと同時にメッセージアプリにお店の住所と地図が送られてきた。
 さては、既に準備をしていたな? てっきり居酒屋か気軽に入れるお店かと思ったら少しお洒落な雰囲気のお店で焦ってしまう。
 自分の今日の服装を考えると微妙なのでは? しかし、一度戻っている暇もないのでしかなたない、このままの格好でいくしない。

「つ、疲れた」

 朝からドッと疲れてしまう。
 時計を確認すると、もう少しで朝礼の時間だった。

「ヤバイ、今日の当番は私だった」

 一日の始まり、日替わりで部署ごとに生活に役立つ豆知識を言い合うみたいな文化が企画部にはあった。
 今日はノドグロミツオシエと呼ばれている鳥についての豆知識を披露するつもりで、小鳥で小っちゃくて可愛いのに蜂蜜が大好き、でも弱いから大好きな蜂蜜をとることができない、だから私たち人間に蜂蜜の場所を教えてくるんだそうで、その代わりに取れた蜜を貰うそうだ。

「いや、なんで私この話題を選んだのよ」

 冷静になって考えてみると、本当になぜ? テレビで見かけたときは「おぉ! 凄い」なんて思ったのに、いざ人前で話すとかなり絶妙な話題のように思えてならない。
 
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