となりの紀田くん



「……………」




暫しの沈黙
真顔で兄を見つめる
ミチルさんの顔が





急に綻んで
そして嘲笑う





「ああ、正解だよ昴。でも、どこで知った?」





う…………そでしょ?






「どうして!?どうしてそんなことを!?」





兄が怒りに任せて立ち上がり
ミチルさんの胸ぐらを
思いきり掴む





「おい、おい。暴力は止めてくれよ。早い話、邪魔だったんだよ………お前の父親の会社がな」





そう言ってケラケラ笑う
目の前のこの男




邪魔だから殺した?
関係のない母まで?





これが人間の出来ることなの?





「あああああぁあああああっ!!!」





その場にあった
果物ナイフを握って





私はミチルさん目掛けて
突き進む……………けれど






ほんの一ミリ手前で
私の手が止まる





どうして!?
なんで刺せないの?
両親を殺した奴よ?





どんなに渇を入れても
一ミリ手前で動かないナイフ





「刺せないの?まあ、か弱いお嬢様だこと。」





由美子さんが隣で
私を嘲笑う…………




止まらない涙





これ以上ここにいたら
本当に自分を見失いそうで怖い。





「要、行くぞ!」




兄が私の手を思いきり掴む
その拍子にナイフが抜け落ち
私たちは紀田家を逃げるように
走り出たーーーーーー





ーーーーーーーーーー





その日から来る日も来る日も
募るのは憎しみばかりで





たまたま紀田家の前を
通りすぎようとして
立ち止まる………




母親の手料理に
父親から頭を撫でられ
幸せそうに笑う裕也の姿





私は…………私と昴は。





貴方の両親が
殺したというのに





いつからしか
その憎しみや妬みを
裕也に向けていた。






裕也も私みたいな
どん底を味わえばいい。






そんな私と兄のもとに
やって来た情報





女子から人気のある裕也。





当然、まわりの女子たちが
噂をしているわけで
どうやら中学は私たちの
通ってる中学に入学する
みたい…………






そうして始まった
兄と私の計画




全ては順調に
進んでいたーーーーー
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