となりの紀田くん



あ、そっか…………
夏祭りのあと…………
事件に巻き込まれたんだっけ?






そうだ梓くん!!






「ところで鈴!梓くんは大丈夫なの!?」





「わっ!あ、梓くんは大丈夫だよ!」





私の食い入った質問に
驚きながらも答える鈴





良かったー…………





ガラガラガラッ





私と鈴のいる病室の扉が
勢いよく開く





「お、姉貴!いつ起きた!?」





「今さっき。ってかアンタ、病院では静かにしてよね。」





果物がたくさん入ったカゴを
片手に抱えながら
おちゃらける柚に
鋭く注意する。






「はいはい。紀田ー、ゆあ起きてるよ!」





そんな私の言葉を軽くあしらって
続いて入ってきた後ろの人物に
話をかける柚






ん、紀田…………………





「ゆあ!お前まじ焦らせんなよ!俺、置いてったら許さねえからな!!」





「誰?」





紀田って誰?





焦りながら話す
紀田と呼ばれた男の顔が
一瞬にしてひきつる。





それどころか、柚や
鈴までもが瞬時に固まる





「お前、それジョーク?」





ひきつった顔のまま
尋ねる紀田という男。





いや、ジョークとか
言われても……………





「知らない。私たち、どっかで会ったことあったっけ?全然、思い出せないんだけど…………」






「ま…………じ………かよ」





途切れ途切れに呟きながら
頭を抱える彼に





私はどんな反応を
したらいいのだろう?





「もしかして…………記憶喪失じゃ」






柚の言葉にピクリと
鈴が反応する。





「でも、じゃあなんで私と柚くんのことは覚えてるの?」





「た、確かに…………え、姉貴。本当にこの人知らないの?」





柚の質問に対して
首を横に振る。





「紀田くんだっけ?ごめんね、全然思い出せなくて…………えっと私と貴方の関係を平たく言うと?」





「ゴニョ………ゴニョ」





私の言葉を丸無視して
何かを呟き出す彼





「え?ごめん、聞こえない」





「………こ…………このバカ猿が!!!何、勝手に記憶なくしてんだバカ!!」





は!?
初対面(かはわからないけど)に
向かってバカ呼ばわりは
あり得ない!!
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