捨てられママでしたが、天才外科医に独占欲全開で溺愛されています
食べ始めると俺の携帯がなりだした。

まさか…

病院からだった。

『先生、急変です。先日オペの前田さんが苦しいと言った後意識なくなりました。今、救急のドクターに診てもらっています!』

『わかった!今すぐ行く!20分で着くから。』


「千佳、智也、ごめん。行ってくる」  

智也を膝の上から下ろし、俺は家を飛び出した。

すぐに大通りに出てタクシーを捕まえ病院に向かう。

どうして俺はこんなにいつもタイミングが悪いのだろう。

今日こそは、と思っていたのに…。

千佳はどんな顔してた?

智也は?

そう思うが俺の仕事はこういうものだ。
千佳は理解があった…以前は。
今は??

でも戻るわけにはいかない。

病院へ駆け込んだところ救命の医師が当てたエコーで心タンポナーデではないか、と言われた。
確かにエコーで貯留が見える。

慌てて他の医師を呼び出し緊急オペの連絡を取る。

夜勤ナースやオペ室にも連絡しオペの手筈を整える。

家族にも連絡し、再度オペになることを説明し病院に来るように伝えた。

1時間後オペ室へ入室し速やかに開胸が始まった。

駆けつけたドクターとともにドレナージをし、どうにか危機は脱した。

術後ICU管理となるため移動するが俺もつきそう。

術後の合併症として考えられるものだが、家族はさぞ驚いたことだろう。

俺は待っている家族への説明を行い、数日ICU管理となるが危機は脱したと話に行くと安心したようだった。

ICUの医師とも連携し術後管理をお願いした。

明け方になり、帰宅しようと思うが状態が心配でなんとなく家へ足が向かない。

ひとまず病棟をラウンドする。

その後溜まっている書類を片付け始めた。
診断書、紹介状、紹介元への返信、保険会社への書類にリハビリ依頼、訪問看護指示書…どんどん書いていかないと果てしなく溜まっていく一方だ。
手をつけ始めたのはいいがキリよく終わるところがわからない。

俺は休みなのに夕方まで記入し続けてしまった。

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