魔女のリュシカと旅する異世界グルメ。

マグロの鉄火巻き

「はあ、さみー」と魔女の少女であるリュシカは長く編んだ銀髪を揺らし、宝石のペリドットに似た、みどりの瞳を瞬かせると、ぶかぶかの褐色のロングコートを揺らしました。滞在先の帝都ランディーナで少女は冬の厳しい寒さの夜風のなか、仕事先の魔術学院での書類作業で縮こまった手に暖かい息を吹きかけました。

「夜食でも食べるか」

リュシカは徒歩で定食屋に向かいました。
街区にある店は灯りがともっていました。戸板をあけ店内の座席に座ります。

「メニューが新しくなっているな。
これは「寿司」か？
ハイテクだな。
最近は定食屋で寿司までテイクアウトか。

まったく···数多の問題を解決するかに見えた「ハイテク化」も次第に価値観を揺るがし、王や貴族、学者たちも制度を理解する術(すべ)が分からず、彼ら彼女らは不作に苦しむ国を統べるいわば盲目の王や妃となり苦しみに満ちた流浪の旅に出そうだな」

魔女のリュシカは自身の長広舌に満足したのち帝都ランディーナの街区に佇む定食屋で12ゼニーを支払い寿司を頼みました。

マグロの握りが看板娘により運ばれてきたのです。