√セッテン

線対称する心

「あのさっ、帰りにクレープ食べて行こうよっ」

敦子が昇降口で挙手の真似をして言い出す。

河田が断る訳がない。

「敦子、お前試験余裕だな」

「いーの、だって古典はもう捨ててるしっ」

だからって他の教科で取り返すとか言う頭はないのか。

また補習の手伝いか、とうなだれる。

「千恵ちゃんは?行くよね」

「あ……えと……」

山岡は敦子の言葉にとまどって声を濁した。

「行っこーよ!」

河田が山岡の肩を叩く。

「試験前なんだから、無理言わすな」

「ごめんね、今回の試験範囲広いし。色々……集中できないから、夜くらいは、がんばりたいんだ」

「そっか、そだよね。じゃあ試験明け! 一緒に行こうね!」

敦子が言って笑った。

「うん、敦子ちゃん」

「ねー敦子でいいよぉ、この前敦子って呼んでくれたじゃん、私も千恵って呼ぶ!ね!?」

女子2人が校門に向かって歩いていく。

河田が2人を見て、何か頷いていた。

面倒なことだろうと、無視をする。

「俺も敦子、とか千恵、とか呼びてぇ……」

「呼べよ……妄想してるよか健全だぞ」

女子2人の後を追いながら、河田と距離を置きたい気分になる。

「呼んでいいわけ?お前は」

「なんで俺に聞くんだ」

「怒りそうだなーとか」

「別に」

「そりゃよかった。俺も話に混じってこよー! 数学バカと帰り一緒なんてゴメンだぜっ」

河田は早足に先を行く2人に絡んだ。
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