√セッテン
「最近、夜とか、寝れてる?」

「え? ……んーちょっと、うなされたり、する、カナ」

「私ね……最近、夜に同じ夢を見るの」

山岡は真剣な表情でそう切り出した。

「夢?」

「そう、怖い夢」

「……蔵持七海が出てくるとか?」

俺の問いに、山岡は首を横に振る。

「逆に、人はだれも出てこないの。たった1人で、暗闇の中にいる」

山岡の言葉に、敦子と俺は目を合わせた。

「毎日死の待ち受けを見てるせいで、それが夢に出てきたのかもしれないけど」

山岡は言って続けた。

「フローリングのまっくらな部屋にいて、私は一生懸命そこから抜けだそうとする」

「………」

「声も外に出なくて、誰も助けてくれなくて。……出口を、一生懸命叩き続ける」

叩いて、叩いて、その動きがスローモーションになって

やがて自身が暗闇に飲まれてしまうという。

「助けて欲しくて、助けて欲しくて、泣き続けるの……私」

「そんな夢、いつも見るの?」

敦子の言葉に、山岡はゆっくりと頷いた。

「それ、死の待ち受けとリンクしてる可能性もあるな」

俺は立ち上がって、死の待ち受けリストを広げた。

"15"、"6"と続いてフローリングの空っぽの部屋が死の待ち受けには表示されていた。

山岡はそれを夢に見たのだろうか。

「ここ、もうライブハウスだと見て間違いないよね」

「カウント"7"で照明器具も映ってたし、間違いないよ」

山岡が敦子の言葉に応える。

「蔵持七海がボーカルなんてやってたなら、関連性もある」

「でもこれだけの特徴じゃ、全然どこだか分らないよね」

「そうなんだよ。フローリーングでこんな機材があるところなんて、ライブハウスとしては基本設備だろ?心当たりをリストアップしてもらってはいるんだけど」

「誰に?」

「堀口俊彦。霧島悠太っていう線もできた。そこから詰めていくのもありだ」
< 146 / 377 >

この作品をシェア

pagetop